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『三つの時計が刻む、家族の時間』第1章|二人の結婚式が、動き始めた日

結婚式の両親への贈り物を探していた二人は、一枚のステンドグラスから生まれる、三つの時計に出会った。

それは、ただ時を刻む時計ではなかった。

二人が育った家。
これから二人が暮らす、新しい家。
そして、まだ見ぬ未来の家族。

同じ一枚のガラスから生まれた三つの時計が、それぞれの場所で時を刻み始める。

しかし、刻み始めたのは、時間だけではなかった。
これは、一つの家族が新しい家族になっていくまでの物語。
そして、三つの時計が刻んでいく、家族の時間の物語。


「結婚式、どうする?」

その言葉を聞いたとき、私は妙に胸がざわざわするのを感じていた。

彼からのプロポーズを受けて、両家への挨拶もすませた。私たちが結婚することは、もう決まっている。

それなのに「結婚式」という言葉を聞いた途端、これまでふわふわとしていた未来が、急に現実的に近づいてきたような気がした。

目次

二人の結婚式に込めたかったこと

婚約してから私たちは、休日になると二人で結婚式場を調べるようになった。

Instagramで結婚式場と検索するだけでも、あらゆる式場の写真が出てきた。

白を基調とした明るいチャペル。
木の温もりを感じるチャペル。
緑に囲まれたガーデンウェディング。
海が見える会場。
ガラス張りで景色が綺麗に見える会場。

写真を見ているだけでも楽しくて、

新郎さん

ここ、いいね

新婦さん

こっちも素敵

そんな言葉を何度も繰り返した。

でも、会場の写真を見れば見るほど、どこを選んでも素敵に思えて決められなかった。

新郎さん

来てくれる人にも喜んでほしいから、料理のおいしいところがいいよね

新婦さん

写真の映えるところにするなら、ガラス張りのところがいいかな?

いざ一つを選ぶとなると、あまりの式場の多さに目が回りそうだった。最初は「こんなにたくさんある!」とワクワクしていたのに、探し続けるほどに少しだけつかれてしまった。

二人の理想の結婚式を叶えられる場所はどこなのだろう?

料理も、衣装も、演出も、写真も。決めなければならないことが、思っていた以上にたくさんあった。

新婦さん

結婚式って、こんなに決めることあるんだね

私がそう言うと、彼は笑った。

新郎さん

一日だけのことなのにね

つられて私も笑ってしまった。決めることがいっぱいで心が折れそうになったけれど、その一日がきっと、これから先も何度も思い出す一日になる。

だからこそ、思い出に残る日にしたいね。

彼と私の声が重なった。

友達の結婚式や芸能人の結婚式を思い出すと、派手で豪華な結婚式はたくさんあった。
けれど、私は派手な結婚式がしたいわけではない。

ただ、二人にとって、「あの日、結婚式をしてよかったね」と、何年経っても言える日にしたかった。

ブライダルフェアで見つけたもの

スマホで見ているだけでは決められなかったので、いくつか気になる式場を実際に見に行くことにした。

現地に行くと、写真では分からなかった会場の広さや雰囲気を肌で感じられた。

料理の試食をしたり、ドレスを見たり、スタッフの人から結婚式の流れを聞いたり。

いざ会場に立ってみると、

新婦さん

ここに家族が座るんだね

新郎さん

この道を歩くのか

結婚式の日の様子がリアルにイメージできた。

いくつかの式場を見学した中で、大きなチャペルが印象的な場所があった。

私はその式場の扉が開いた瞬間、差し込んできた光に目を奪われた。その光は、正面にある大きなステンドグラスから反射したものだった。

色とりどりのガラスを通った光が、床に淡く落ちている。同じ光なのに、ガラスを通すだけで表情が違う。私はしばらく、その場から動けなかった。

新婦さん

きれい……

思わず声が漏れていた。

隣にいた彼も、私と同じようにステンドグラスを見上げている。

新郎さん

ステンドグラスって、なんかいいよね

新婦さん

うん

短い会話だった。
でも、なぜかその言葉が心に残った。

ガラスの向こうに見えた、これからの家族

チャペルの中を歩きながら、私はステンドグラスを何度も振り返った。
光が当たる場所によって、色の見え方が違う。少し角度が変わるだけで、さっきまで見えていた色が違って見える。

新婦さん

これって、時間によっても色が変わるのかな?

新郎さん

たぶん、朝と夕方でも違うんじゃない?

太陽が昇る時間から、日が高くなり、落ちていく。その時間と共に、ステンドグラスの輝きが変わる様を想像した。

新婦さん

結婚式の日も時間によって違って見えるのかな

新郎さん

そうかもね

そんな何気ない会話をしながら、二人でチャペルの中を歩いた。


結婚式は、二人だけのものではなかった

式場をいくつか見学しているうちに、少しずつ気持ちが変わっていくのがわかった。

最初は、「どんなドレスを着よう」「どんな会場にしよう」そんなことばかり考えていた。
けれど、結婚式の話をすればするほど、そこにはたくさんの人が関わることに気づいた。

私たちを育ててくれた両親。
今まで一緒に過ごしてきた家族。
これから夫婦として歩いていく私たち。

結婚式は、二人が夫婦になる日。
それと同時に、今まで別々だった二つの家族が、近づく日でもあるのかもしれない。

そう思うようになった。

新婦さん

両親にも、ちゃんと喜んでもらえる日にしたいね

私が言うと、彼は「そうだね」と言ってくれた。

ただの同調の言葉だったけれど、そこには私と同じ気持ちが入っているような気がした。

両親への贈り物を考え始めた

結婚式について調べれば調べるほど、やることは増えていった。
会場、衣装、料理を決め、招待する人や写真や映像についても考える。

そして、少しずつ具体的になっていく結婚式。

そんな中、ある日、式場のスタッフから「ご両親への贈り物も、そろそろ考えておくといいですよ」と言われた。

私は彼の顔を見た。彼も私を見た。そして、二人で考え込んでしまった。

両親へのプレゼント。今まで育ててもらった感謝を、何かにして渡す。それは分かる。

でも、何を贈ればいいんだろう?

花束だけではなく、ずっと残るものもいい。
けれど、形に残れば何でもいいわけではない。

せっかくの結婚式だからこそ、「ありがとう」だけでは伝えきれない気持ちを、何かに託したかった。


そのときの私たちは、まだ知らなかった。
この「何を贈ろう」という小さな迷いが、やがて一枚のステンドグラスとの出会いにつながっていくことを。

そして、その一枚のガラスから生まれる三つのものが、二人のこれからと、二つの家族をつなぐものになることを。
あの日の私たちは、まだ知らなかった。

結婚式という一日を二人で考え始めた日が、私たち家族の時間が動き始めた日となった。

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