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『三つの時計が刻む、家族の時間』第2章|両親に、何を贈ろう

↓第一章をまだ読まれていない方は、こちらから先にご拝読ください。↓

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新郎さん

両親へのプレゼント、何にする?

式場からの帰り道、彼が運転しながら問いかけてきた。

新婦さん

うーん……

結婚式の準備を始めてから、考えることが一気に増えた。

  • ドレス
  • 料理
  • 招待する人
  • 写真

そして、両親へのプレゼント。

式場のスタッフから言われたときは、「両親にも何か贈るんだ」くらいにしか思っていなかった。でも、いざ考え始めると、何を贈ればいいのかわからなくなる。

新婦さん

何がいいと思う?

私が聞くと、彼は少し考えてから、「やっぱり花束じゃない?」と言った。

新婦さん

花束もいいよね

結婚式といえば花束のイメージがある。

友人の結婚式に参加した時も、彼女は両親に花束を贈っていた。手紙も一緒に添えられていて、お父さんもお母さんも涙ぐみながら喜んでいたのを覚えている。

家に帰ってから、私は「結婚式 両親 プレゼント」と検索してみた。

他にも何か贈れるものがあるかもしれない。

調べてみると、想像していた以上に、検索画面にはたくさんの商品が並んだ。

  • 花束
  • ウェイトベア
  • フォトフレーム
  • 名前やメッセージを入れられる記念品

どれも、結婚式の両親へのプレゼントに人気があるものらしい。
それぞれのプレゼントに異なる意味が込められていて、どれも素敵だった。

新婦さん

これ、かわいい

新郎さん

ほんとだ

新婦さん

こっちもいいね

新郎さん

うん

ページをめくるたびに、別のものが気になる。次々と出てくるものに目移りしてしまう…。

新婦さん

……決められないね

私が言うと、彼が笑った。

新郎さん

まだ時間あるし、ゆっくり考えればいいんじゃない?

新婦さん

そうだけど…

私はスマートフォンを伏せた。
なぜか、どれを見ても、「これにしよう」という気持ちにはなれなかった。

別に、気に入らないわけではない。どれも、素敵な贈り物だった。それなのに……。

新婦さん

なんか、決め手がないんだよね

新郎さん

わかる、難しいよね

彼も小さく頷いた。

その言葉に、少し安心した。迷っているのは私だけではなかった。

目次

両親へのプレゼントに込めたいもの

夜、彼が眠る横で、私は両親へのプレゼントを調べ続けた。

「結婚式 両親への贈り物」その言葉で検索すると、あらゆるものが出てきた。

華やかなもの・実用的なもの・記念に残るもの

どれも、「ありがとう」という気持ちを形にするためのものだった。

私は画面を眺めながら、ふと考えた。

新婦さん

私はお父さんとお母さんに、何を伝えたいんだろう?

「今までありがとう」という気持ちはもちろんある。

  • 育ててもらったこと
  • 学校に通わせてもらったこと
  • 何気ない毎日を、一緒に過ごしてきたこと
  • 風邪をひいたときに看病してくれたこと
  • 帰りが遅くなった日に、何も言わずに待っていてくれたこと

振り返れば、たくさんの時間をもらっていた。

思い出すとキリがないくらいたくさんの感謝がある。そのすべてを「ありがとう」の一言にまとめてしまうのは、なんだか物足りないような気がした。

両親は、私が生まれてから今まで、たくさんのことをしてくれた。
私が覚えていない小さな時だって、手がかかったに違いない。

私が結婚をすると話した時、お父さんが気づかれないように涙をこらえていたのを知っている。
お母さんは大手を挙げて喜んでくれていたけれど、それでも私が実際に家を出る日までの間、寂しそうな顔をする瞬間があった。

私はまだ、両親に何も感謝を伝えられていない。

だからこそ、結婚式で、私が伝えられていない、伝えてこなかった気持ちを伝えたい。

新婦さん

でも、私の気持ちをぜんぶ形にできる贈り物なんて、あるのかな?

友人のように手紙にして伝えるという手もある。それでも手紙に収められるのかわからない。

プレゼントと一緒に手紙を添えることで、すべてを伝えられる。
そんなプレゼントがあればいいのに。

「ずっと残るものがいいね」

次の休日。私たちはまた、二人で両親へのプレゼントを探していた。

スマホを真剣に見つめていた彼が、ふいに「花束もいいけど、なくなっちゃうよね」と呟いた。

新郎さん

せっかくなら、ずっと残るものがいいんじゃない?

その言葉に、私は大きく頷いた。

新婦さん

私もそう思ってた!

新郎さん

じゃあ、記念品とか?

新婦さん

いいけど…ただ、ずっと残ればいいってわけでもないんだよね

新郎さん

どういうこと?

新婦さん

うまく言えないけど

画面に並ぶ商品を見ながら、私は考えた。

新婦さん

置いてあるだけのものじゃなくて、毎日の生活の中にあるものがいいっていうか……

新郎さん

難しいな

彼が少し笑った。

新婦さん

自分でもそう思う

私も笑った。

冗談でも誇張でもなかった。
本気で、そんなプレゼントがあればいいと思った。

両親が見るたびに、「私たちからのプレゼントだ」と思ってもらえるもの。
結婚式の日だけで終わらず、その後もずっと家の中にあるもの。

そんなものがあったらいい。そう思った。

両親へのプレゼントに「時計」を選ぶということ

そのとき、彼がスマホを覗き込みながら言った。

新郎さん

時計とかは?

新婦さん

時計?

彼のスマホを見ると、プレゼントにおすすめの時計が映し出されていた。

新郎さん

毎日使うものだし

新婦さん

……時計か

言われてみれば、確かにそうだった。時計なら、飾っておくだけでは終わらない。

朝、目が覚めてから仕事へ行く前に見る。
夕方、家に帰ってきて、食事をしながら、ふと目に入る。

毎日の生活の中に、自然にあるものだ。

他の置物と違って、飾ってあることを忘れられることもない。

新婦さん

いいかも

私はもう一度、検索画面を開いた。

結婚式の両親へのプレゼントとして、時計を選ぶ人もいるらしい。

  • 写真を入れられるもの
  • 名前を刻めるもの
  • 二人の名前や結婚式の日付を入れられるもの

たくさんの時計が出てきた。

新婦さん

これ、いいね

新郎さん

うん、シンプルなものもあるね

新婦さん

お父さんなら、こっちのほうが好きそう

新郎さん

お義母さんは、もう少し華やかなほうが好きかな?

両親の顔を思い浮かべながら、二人で次々と出てくる時計を見ていた。悩みながらも二人で選んでいると、少しずつ贈り物を選んでいるという実感が出てきた。

けれど、画面に並ぶ時計を見ていても、どこかしっくりこなかった。

新婦さん

やっぱり、どこか違うんだよね…

新郎さん

うん、悪くないんだけどね

そう、どの時計も悪くはなかった。でも、「これだ」と納得のいくものは一つもなかった。
結局この時も、両親へのプレゼントは決まらなかった。


三連時計という言葉を知った

ある日、彼が嬉しそうに「こういうのがあるみたいだよ」と、スマホを私に向けてきた。

画面を覗き込むと、そこには三つの時計が連なって並んでいた。

新婦さん

時計が、三つ?

新郎さん

うん、三連時計っていうみたいだよ

『三連時計』私は初めて、その言葉を知った。三つ連なった時計は、三つの家族を繋いでくれるものらしい。結婚式には三つの時計を並べられて、その後はそれぞれ別々の家に置くことができる…。

新婦さん

素敵!

私は画面をじっと見つめた。

これまでいくつもプレゼント用の時計を見てきた。
これも同じように時計なのに、三つ並んでいるだけで意味が変わって見える。

新郎さん

いいよね!

彼の笑顔が輝いて見えた。私もきっと、目を輝かせていたと思う。

三つの家に、同じものがあった

新郎さん

なんかさ、三つ並んでると家族って感じがするよね

新婦さん

どういうこと?

新郎さん

俺たちと、君の家族と、俺の家族の三つだよ

その言葉を聞いて、私はもう一度三連時計を見た。

三つの時計。それぞれは別々のものなのに、並んでいると、一つのものに見える。

結婚する私たちと、それぞれの両親。
三つの家に、同じ時計を置ける。

なんだか不思議だった。
結婚するということは、私たち二人だけの家族をつくることだと思っていた。

でも、本当はそれだけじゃないんだ。私が彼の家族の一員になって、彼も私の家族の一員になる。
これまで別々の場所で暮らしてきた家族が、私たちの結婚をきっかけに、少しずつつながっていく。

そう考えると、三つの時計が並んでいる意味が、少し違って見えてきた。

新婦さん

離れて暮らしていても、同じ時間を刻めるのね。なんだか素敵だね。

まだ何も決まっていないのに、私は少しだけ、その先の暮らしを想像していた。
三つの家。そこに流れていく、それぞれの時間。そして、その真ん中にいる私たち。

新郎さん

両親のプレゼント、これにしたら喜んでくれるかな?

新婦さん

うん、きっと喜んでくれると思う

あの日、チャペルで見た光

それから数日後。いつものように、二人で結婚式について調べていた。
結婚式場や必要なものについて調べていた時、画面をスクロールしていた私の指が、ふと止まった。

新婦さん

わぁ…

新郎さん

どうしたの?

私は画面を見たまま、動かなかった。

そこに映っていたのは、一つの時計だった。
色とりどりのガラスが組み合わされて、時計の文字盤の周りを、淡い色のステンドグラスが囲んでいた。

光を受けたガラスが、画面の中でもきらりと輝いて見える。

私は、その時計から目を離せなかった。

新婦さん

これ……

新郎さん

ステンドグラス?

新婦さん

うん

隣から覗きこんできた彼と目があった途端、あの日見たチャペルが頭に浮かんだ。

大きな扉が開いたときに差し込んできた光。
床に落ちていた、色とりどりの光。

思わず、「きれい……」と呟いたこと。

そして二人で、「時間によっても違って見えるのかな」なんて話したこと。

まだ結婚式場を探していた頃の、何気ない一日。

新婦さん

覚えてる?

私が聞くと、彼は少し笑った。

新郎さん

もちろん

ステンドグラスの時計を見ていると、なぜか惹きこまれていった。それは、あの日チャペルで見た時と同じ気持ちだった。

以前彼が調べてくれた木製の時計とは、何かが違って見える。

新郎さん

これ……両親へのプレゼントにしたら?

彼が言った。私はしばらく答えなかった。

ただ、その時計の写真を見つめていた。

これなら、両親の家に置いてもらえるかもしれない。

新婦さん

……実物、見てみたいね

私が言うと、彼も頷いた。

そのときの私たちは、まだ知らなかった。その時計が、ただの時計ではないことを。
一枚のステンドグラスから、三つの時計が生まれることを。
そして、その三つの時計が、それぞれの家で家族の時間を刻んでいくことを。

ただ私たちは、「両親へのプレゼント、これならいいかもしれない」そう思いながら、もう一度その写真を眺めていた。

それが、私たちと「つながる時計」との、最初の出会いだった。

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